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黒い鳥


彼女は黒い鳥を飼っている。もちろんカラスなんかではない。もっと大きい。鷲のような姿形をしているが嘴から尾羽まで墨で塗ったくったように真っ黒だ。最初に見たときはぎょっとした。得体の知れない黒い穴のように見え、とても生き物とは思えなかった。羽根を広げたらさぞ大きかろう。その爪で鷲掴まれたらごそりと肉を持っていかれるだろう。しかし黒い鳥は大空に舞うことを夢見もせず、鋭い爪を畳んで、鳥籠の中に静かに収まっている。大きな籠ではある。が、鳥にとってはそれでもなお窮屈だろう。

立派な鳥だねと誉めると彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。いつの間にかこんなに大きくなってしまって、困っている、と。飼っているうちに巨大になったカメならよく話は聞くが、鳥となると珍しい。しかし彼女の部屋は広くまるで城の一室のような風情のある空間だったので、大きな鳥籠も自然と馴染んでいるように見えた。僕の部屋にこんなものを置いたら、自分の肩身が狭くなってしまってしょうがない。そんなことを嫉妬混じりに話すと彼女は髪の毛を指に巻きながらこう呟いた。

「そんなことないよ。本当に邪魔なの。」

黒い鳥は身じろぎ一つしなかった。




つづく。

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進撃の巨人1~8巻感想

すごい勢いで読み切ってしまいました
当然のようにネタバレを含みます


前評判で「続きが気になる」「人がゴミのようにバンバン死ぬ」と聞いていたのですがその通りでした。でも主要キャラもカンタンに死ぬと聞いていた割には、生き残ってるじゃないかという印象。104期生の主要メンツもなんだかんだ大半生き残ってるし!リヴァイ班は……うん(´;ω;`)
キャラクターや物語の筋を事象だけ羅列してみると、そんなに特別なキャラや流れじゃないと思うんです。けどなんていうか描き方が独特で。先読みが全然出来ない。これは作者の天性の才能、っていうか、癖みたいなものなんじゃないかなあと。
絵が好きです…たまに手とかおかしいけど。剣でズバーッとか、空中をガーッと滑走とか、そういうの好きなんです。カッコイイ!
巨人も思ってたより怖くなかったです。青鬼に似てますね。あれを乗り越えられた私に死角はなかった
次からキャラクターごとの雑感。

・エレン
無鉄砲・喧嘩っ早い・特殊能力持ち・記憶喪失とすごく主人公らしい主人公。この手の主人公を好きになることはあんまりないんですが、エレン好きです。強盗をメッタ刺しにしてるときに惚れました。あれで9歳とかなんだよ!戦闘民族かよ!しれっと「だって人間じゃないもの」とか言っちゃうし。「とにかく巨人をぶっ殺したいです」とか「黙って俺に投資しろ」とか名言がたくさんですね。思ったより暴力的なところが好き。巨人へのものすごい憎悪を感じます。人類全ての憎しみを体現しているかのよう。
全体的に能力が高いのかなと思ったら格闘技の他は努力とは意外。ただの喧嘩の強い奴だった。
あの眉毛描くの大変そうですね…
巨人に食われたときは1巻にしてもう主人公死んだのかと思ってびっくりしました。でも容赦なく人死ぬって聞いてるし、もしかして「主人公だから死なないと思ったか?」「いつからエレンが主人公だと錯覚していた?」って感じなのか…?過去の謎は丸投げでこれからはミカサかアルミン主人公の体で進んでいくのか…?とか考えちゃいましたよアハハ 生きててくれて良かった~

・ミカサ
エレン厨。だが超絶カッコイイ。アッカーマンとか名前までカッコイイ。この手のクール系を好きになることはあんまりないんですが以下略
すげえ強い人は好きです。主人公より強いヒロインとかすごく良い。
エレンが死んだと知らされたとき「落ち着いて」と言い放ったところ、でもエレンが生きてるって分かったとき子供のように声を上げて泣いていたところ、惚れました。ずっとエレンから貰ったマフラーしてるんですよね可愛い
エレンも生き急いでますがミカサも相当生き急いでいるので主要キャラで死ぬならミカサが一番かなって思ってましたすみません死なないで

・アルミン
大好きです。力はないけど頭脳で戦うキャラ、大好きです。舌噛みそうな名前だけど。
組織的にもああいう人は必要なのでたぶん出世する。さらっと重要な会議に呼ばれてるし。がんばってほしい。
エレンが殺されそうになったときの説得は痺れましたね。あれで惚れない奴がいるのか!!
女型の巨人への考察の早さはすごかった、ほんとに。命の危険に晒されてるってのに。読んでる方が思考が追いつかなかったよアルミンまじスゲーよ

・ジャン
楽して暮らしたいとか言って主人公と対立・ヒロインに惚れてて主人公にライバル意識・名前がすごい平凡とかもうジャンを構成する全てが死亡フラグとか思っててゴメンまだ生きてるね
絶対「俺もヤキが回ったな…」とか言いながらエレンを庇ったりしてイイ死に方するんだと思ってたゴメン
ぜひこれからも情けなく生き残って欲しい。すごい愛しい。愛しさならジャンがトップかもしれない。この不憫さがいいのよ。
替え玉ジャン超ビビっててかわいかったw

・104期生女性陣
クリスタちゃんまじ女神 でも戦場における女神キャラって死亡フラグなんじゃ
もうだめだ全てが死亡フラグに見えてくるこの漫画
そばかすちゃんも良いキャラしてるぜ。クリスタのこと好きなんでしょねえ。
サシャたんは最初の方から目をつけていた。愛しい芋女。「そこに芋があったから食べた」って、かっこよすぎるぜw
アニは絶対本当は良い子なのでこれからに期待。アニ=女型の巨人、って最初全然理解できなくてすごい置いてけぼり状態だった。まさか104期生の中にいるとは…それを見破ったとか…アルミン先輩やっぱパネエ…

・リヴァイ
この人とエレンだけ名前聞いたことあったので人気なんだろうなって思ってましたが第一印象では嫌いでした。
人類最強でガラ悪い元ヤンのくせに潔癖症でチビとかこんなあざとい腐女子ホイホイなんか絶対好きにならないと思ってたのにドウシテコウナッタ好きです
巨人殺すの楽しくなっちゃう猟奇キャラと思いきや仲間の死を嘆いたりエレンやミカサを助けるためにがんばったりしちゃうとかあなたあざといんですよ怪我した足さすらせてください
他のキャラは純粋に大好きなんですがリヴァイには劣情を抱く
負傷した人類最強とか存在がエロいだろうが

・ハンジ
すごい好き。「熱ッッい!!!!」には吹きましたwあのハッスル具合はすごいですね。マッドサイエンティストの位置のくせしてちゃんと前線に立って戦ってるところが良い。司祭に怒ってるところはカッコよかった……女性だよね?

みんな好きだー!!死ぬなー!!!

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伊藤開司という男

唐突にカイジ観を語る。完全に自分で整理するだけのために。ついったでだらだら流すにはあまりにも長くなりそうなので…

カイジってすごく「男性」なんだと思う。「男らしい」じゃなくて、「男性らしい」。
わたし男の人そんなに得意じゃないから、実際カイジが三次元にいたら怖いと思う。「あぁ?」とか、すぐ言うし。そんなつもりなくても、怒ってるように見えるし。怖い。お会計とかしたくないよー
あんなに邪険にされてもめげない美心ちゃんはスゴいと思うよ…。なんなの、ドコに惚れてるの?顔?顔なの??福本界ではワイルド系イケメンなの?

考え方はものごっつ理系なのに、「友情」だの「絆」だの曖昧な表現に夢見ているところとか、すごーく男性っぽい。
でもそこがカイジのいいところなの。少年漫画の主人公よろしく、安心して共感できるっていうか。
普通に考えて、あんだけさんざん裏切られてるくせに、何言ってんの?って感じだよね…和也の言う通り。彼の中にも自信持って言える何かがない。だから薄っぺらい根性論しか語れない。でも、嘘並べてるわけじゃなくて、本心からそう思ってはいるんだよね。すごくよく分かる。わたしも真の友情ってあると思うし、あって欲しいと思う。いいじゃない、キレイゴト。世の中にはそういう倫理が必要だよ。誰もキレイゴトを言わなくなったら、世界はどーなっちゃうのさ。
なんてーか、和也(愛だの友情だのちゃんちゃらオカシイって言ってくる奴)に向かって「そうじゃねーよ!!」って語りたいんだけど、それができない、ってあたり、ものすごく「若者」らしいと思う…。
「友情」「裏切り」って、『カイジ』の重要なテーマだと思うので、いまやってるvs和也はどうなるんだろうってドキドキしてます…。三好たちと仲直りできるといいなあ…やっとできた仲間だったのに…。

カイジだって非情な人間になるチャンスはあった、というか本人なろうとしてたんですよね。でも鉄骨渡りで分かった。「押さない」と。これがカイジの人間性の全てでもあるかもしれない。押さないんですよ、彼は。押さなきゃ押されるとしても。それで今まで色んな損をしてきているのに、「押さない」。すごくバカな生き方かもしれないけど、カッコイイなって思います。この鉄骨渡りがなかったら和也とここまで戦おうとしなかったんじゃないですかね。「押さない」ことと「石田さん」が彼の中で柱として一本通っている…。だから自分でこれはキレイゴトなんじゃないかって疑いはない。あれ…この出来事って「自信持って言える何か」じゃないか。じゃなんで、和也の前でカイジの言葉は薄っぺらく感じてしまうのか。うーん、分からなくなってきた。うまくまとめられない。

カイジはクズ、クズって言われてて、確かに出来た人間じゃないけど、倫理観はクズじゃない。だから根底はクズじゃない、ってわたしは思うんです。彼だって仕事しなくちゃ、とか、居候はよくない、とか、思ってはいるんです。…思ってはいるんだよね!わかるよ!!
ギャンブルで覚醒してるところ見ると、カイジって潜在能力は高いんじゃ…と思う。観察眼鋭いし、頭の回転早いし。ただ日常生活ではそれが出せない。本気で生きてないから…。彼はいま、ギャンブルの中でしか生を実感できてないんじゃないか。アカギと同じで。働いてないから?一人暮らしはしているものの、まだ子供っていうか。誰かの庇護化で生きてる感じがする…。ぬくぬくと生きてられる状況があったら、人間は楽な方へ流れていくものだから、そちらへ流れていくものだと思う。でもそれじゃダメなんだ。死んでるのと同じなんだ。働くっていうこと。そして生きていくということ。労働はお金のためだけじゃなくて、人間が人間らしく生きていくために必要なことだと思う。カイジがいつか、そういうことが、分かるようになればいいと思います。(わたしもまだ学生の身分で偉そうに、って感じですけど…)
『カイジ』の終わりは大金持ちになってオワリ、にはできないと思う。ぜったいそれじゃダメだ、あいつ。人間としてダメになる。しかもその金、いつか尽きるでしょ?あると思うと際限なく使っちゃうモンでしょ?ぜんぜんダメだー!だったら、ぜんぶスッちゃっていいよ!
カイジにアカギと同じ生き方はできないと思うんだ…

カイジってもう、キャラクターとして好きを通り越しちゃってるんですよね、わたし。人間らしすぎる。三次元にこーいう人、いるいる!って。自分に似てるところもあって、好きっていうか人間として愛おしいっていうか…うん。鉄骨で死んだ9人の命を背負って生きてるくせに、だらだら居候したりブレブレなのに、そのブレが人間らしいんです。「伊藤開司」としては一本通ってる。間違ってない。キレイゴト吠えたいけど、本気出ないときは出ないし。うん、分かるぜ……
たくさんの共感を呼ぶカイジのキャラクターが、人気の一因でもあるでしょう。こんなに立体的な人間を描けるなんて、福本先生はほんとうに偉大だと思います。敬礼。

またなんか思ったら書き足します

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レトロオフ~さらばにっく編~

オフレポです。続きからどうぞ!

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恩田陸『球形の季節』

多少のネタバレを含みます


この作品の、引きつける力はすごいですね。先が気になって、どんどん読んでしまう。エンターテイメント作品としてはそれで大成功なんじゃないでしょうか。文章的な技巧も気になるところがなく、久々にのめりこんで読むことができました。

『ユージニア』や『蛇行する川のほとり』を読んできた身としては、恩田さんが田舎の閉鎖的な町の中で蔓延する都市伝説を題材にするのは、とてもしっくりきます。人物もたくさん出てきて、巧みに絡み合いながら物語が進んでゆく。どうなるんだろう、どうなるんだろう、とワクワクしながら読んでいきます。

中盤を過ぎた辺りからちょっと不安になってきます。新キャラどんどん出てきちゃうし、謎は全然解明されないし、ちゃんと終わるんだろうか?と。

そして最後。な、なんだと…こ、これで終わりか…と思わず呟きました。

私が今まで読んできた恩田陸作品の中で、いちばんファンタスティックな要素が強いなと感じました。他の作品にも、そういう要素はあるのですが。ちょっと記憶が曖昧なので確かなことは言えませんが、そう感じました。こういうところが、純粋にミステリーを求めている人には納得がいかないかもしれませんね。なんだよ、それ。ズルいじゃん!という気持ちになるかも。

というかこの話は、ミステリーじゃないですね。読み終わってから気付きました。どちらかと言うとホラーですね。
恩田さんは原因の分からない、なんとなく伝染してゆく「不安」とか「恐怖」、そういうものを書くのがとってもうまい作家さんなんですよね。今回もとても怖かったです。暗闇を見ていると、そこに何かがいるような気がしてくる。そんな種類の恐怖。舞台が東北の田舎というのもまた、怖い。田舎には昔の日本が取り残されていますから、妖怪とかそういうものがいたっておかしくないし、年寄りなんかは実際それを信じている。
民俗学的な日本。それをよく分かっているなと思いました。

また、私の読んできた恩田陸作品の中で、いちばん思想が強く出ている気もしました。もし「徹底!恩田陸分析」とかいう本を書く人がいたとしたら、この作品はとても重要なポジションになるんじゃないですかね。

キャラクターの話をします。キャラクターをたくさん出して、その一人一人の個性を説明するのは、ものすごく難しい作業だと思うのですが、さすが、うまくやっていますね。
例えば主人公格のみのりという人物ですが、こういう子に個性を持たせるのは実は難しいんじゃないかと私は思います。物語を回すのに夢中になって、人物が死ぬ。ということが、ままあるような。でもみのりはちゃんと生きていますね。
これは人称を三人称にしたおかげかもしれません。他の人から見たみのり、がいるからみのりが生きている。三人称とは言っても遥か頭上から物語を見下ろす神の目線ではなく、一人の人物の目線から見ているのだけれど人称は三人称、という形だと思うのですが、これがごちゃごちゃにならずにうまいこといっている。だから物語を多方面から進めることに成功しているんですね。すごいです。

恩田さんは「黒髪の怪しい美少女」という人物像が好きで、他の作品にもよく出てくるのですが、今回は丹野静がそれでしたかね。立ってるだけで絵になるような美少女。そんな物語的な人物は現実にはいねーよと思うかもしれませんが、実際いますからね。藤田晋なんか、めちゃくちゃ漫画的で、私は「こんな奴いねーよ」と思ってしまいましたが、「黒髪の怪しい美少女」が実際にいるのですから、「怪しい美少年」も、どこかにいるのかもしれません。
なんとなくカヲルくんや兵部少佐を彷彿とさせますね…好きですけどね…「大きくてきれいな手」という表現、とても好きでした。きれいな手だけだと女々しくて気持ち悪いですが、大きいというところがポイントです。
啓一郎を助けるところから「お前を殺してやる」と言うシーンまで、かっこよすぎて、読んでいる場所がマックじゃなかったら「キャーーーーー!!!!カッコイイーーーーーッ!!!!」と叫んでいるところでした。

みのりとチャコが取っ組みあって喧嘩するシーンなんかも、人間らしくて好きでした。
一人一人に明確な「顔」が見えますね。潮見兄弟は何故かちょっと見えづらかったけど…多分彼ら目線の章がなかった?からかな。でも、他の人にはちゃんと見えました。
こんなに魅力的なキャラクターなのだから、高校生を主体にして、もっと別の物語を書けばいいのに…と思いましたが、『夜のピクニック』や『ネバーランド』ですでに書いていましたね。
調べて知ったのですが、球形の季節はけっこう初期の作品なんですよね。ここからその二つのような作品に繋がっていったのかと思うと、納得です。

そうそう、章のタイトルの付け方も好きでした。目次を見て、何がなんだかわからないけどドキドキしました。

しかし最後は…私には救いがないように思えました。激しい怒り、のような強い想いを読み取りました。それが人類に対してなのか、なんなのか、分かりませんが。
そして題名の意味が分からなかったです。「球形の季節」がいつなのか、ていうか球形ってなんなのか。地球のことですかね…?

面白かったけど、アクの強い作品でした。

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