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片腕のギタリスト

『片腕のギタリスト』

 

四つん這いのギタリスト、
幼いころからロッカーで
ワァワァ歌いながらギャンギャンギャンと好き勝手
周りのみんなは微笑ましいと言って眺めた


制服のギタリスト、
当然のようにギターボーカル
そこそこ立派にギュインギュインと掻き鳴らす
周りのみんなは天才と言ってもて囃した


路上のギタリスト、
音楽で生きていくんだと
仕事もせずに毎日毎日ジャンジャンと必死
周りのみんなはそろそろ飽きたと言って立ち去って行く


一人ぼっちのギタリスト、
ある時ぱったりギターをやめた。
何もする気が起きない。
屍みたいに日々を過ごす。


一人ぼっちの誰か、
ある時ぽっきり腕が落ちた。
使わなすぎた右腕が、根元から腐り落ちた。
床に転がった右腕を見て、誰かはこう思った。


もうギターが弾けない。


片腕のギタリスト、
途端に後悔が襲う。
腕があるうちに、なんで弾かなかったんだろう。
悔やんで、悔やんで、死ぬほど悔やんで、
泣き晴らした朝にこう思った。
まだ喉がある。
まだ歌える。
まだ音楽が出来る。


片腕のシンガー、
喉が枯れてしまう前にと
歌った、
ギターの代わりに、右腕の代わりに
その歌を聴いたみんなは涙を流した。
「素晴らしい歌だ」と言って涙を流した。

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黒い鳥


彼女は黒い鳥を飼っている。もちろんカラスなんかではない。もっと大きい。鷲のような姿形をしているが嘴から尾羽まで墨で塗ったくったように真っ黒だ。最初に見たときはぎょっとした。得体の知れない黒い穴のように見え、とても生き物とは思えなかった。羽根を広げたらさぞ大きかろう。その爪で鷲掴まれたらごそりと肉を持っていかれるだろう。しかし黒い鳥は大空に舞うことを夢見もせず、鋭い爪を畳んで、鳥籠の中に静かに収まっている。大きな籠ではある。が、鳥にとってはそれでもなお窮屈だろう。

立派な鳥だねと誉めると彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。いつの間にかこんなに大きくなってしまって、困っている、と。飼っているうちに巨大になったカメならよく話は聞くが、鳥となると珍しい。しかし彼女の部屋は広くまるで城の一室のような風情のある空間だったので、大きな鳥籠も自然と馴染んでいるように見えた。僕の部屋にこんなものを置いたら、自分の肩身が狭くなってしまってしょうがない。そんなことを嫉妬混じりに話すと彼女は髪の毛を指に巻きながらこう呟いた。

「そんなことないよ。本当に邪魔なの。」

黒い鳥は身じろぎ一つしなかった。




つづく。

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