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黒い鳥


彼女は黒い鳥を飼っている。もちろんカラスなんかではない。もっと大きい。鷲のような姿形をしているが嘴から尾羽まで墨で塗ったくったように真っ黒だ。最初に見たときはぎょっとした。得体の知れない黒い穴のように見え、とても生き物とは思えなかった。羽根を広げたらさぞ大きかろう。その爪で鷲掴まれたらごそりと肉を持っていかれるだろう。しかし黒い鳥は大空に舞うことを夢見もせず、鋭い爪を畳んで、鳥籠の中に静かに収まっている。大きな籠ではある。が、鳥にとってはそれでもなお窮屈だろう。

立派な鳥だねと誉めると彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。いつの間にかこんなに大きくなってしまって、困っている、と。飼っているうちに巨大になったカメならよく話は聞くが、鳥となると珍しい。しかし彼女の部屋は広くまるで城の一室のような風情のある空間だったので、大きな鳥籠も自然と馴染んでいるように見えた。僕の部屋にこんなものを置いたら、自分の肩身が狭くなってしまってしょうがない。そんなことを嫉妬混じりに話すと彼女は髪の毛を指に巻きながらこう呟いた。

「そんなことないよ。本当に邪魔なの。」

黒い鳥は身じろぎ一つしなかった。




つづく。

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