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2024/05/17 (Fri)
2013.04.13
14.黄緑のパズル/97.ライオンのたてがみ
白い部屋だった。 壁紙が白かったのか床が白かったのか、それとも全然関係なくただ窓からの日差しが目いっぱい溢れていたから白く見えたのか、よく覚えていない。四角くて…たぶんほとんど正方形。真ん中にぽつりと座り込む当時の私には広く感じた。床には何も敷いていなかった。物のない部屋だった。ベッドとかテーブルとか、なきゃいけないものまで全てなかった。引っ越し間際の部屋みたいだったかもしれない。ただ、遊び道具だけはいくつかあったように思う。ゴムボールやけんだまや、電車のオモチャ、クレヨンなど、いろいろあったけどすぐに飽きた。だけど何故かパズルだけは飽きずに何度も何度も繰り返し遊んでいた記憶がある。何の絵だったか、それは忘れた。黄緑だった。とにかく黄緑色のパズルだった。淡い、春の、新緑の色だった。そんなにピースの数は多くなく、子供の私でもちょっと時間をかければすぐに完成させることができたのだけど、できるとすぐに崩してバラバラにしてもう一度やった。あの部屋のことを思い出すとき、まず匂い。なんとも言えない懐かしい匂い。それを吸ったとき舌に残る味。それと、あのパズルの黄緑色。この三つを鮮烈に思い出すのだった。
「まるでライオンのたてがみみたいだ」
と、彼は私の髪に触れながら言った。確かに、背中を刺す金色の髪はちくちくと痛く、逆立っている。切ることなんてしないし、とかすことだってしないから、荒れ放題だ。彼は呆れながら私の汚れた金髪を手ぐしでといてくれた。あちこち引っかかって痛くって、涙が出た。
「でもメスにたてがみはないよ」
私が首を逸らして言うと、逆さまの世界で彼が眉を寄せて笑った。そうだね、と。私の体に後ろから腕を回す。
「だったら君は、オスなのかもしれない」
彼が額を私の肩につけて、体重を預けてくる。私は彼の体温を受け止めながら、首を捻って頭の上にはてなマークを出した。彼は淡々と説く。
「だって人間の女の子というのは髪をきれいに揃えて、とかして結んで、着飾るものだ」
ライオンみたいな君とは全然違うね。
「女の子はきれいな服を着るんだ、それも毎日違う」
ほつれたワンピースを着たきりスズメの君とは違う。
「女の子はふっくらした体と瑞々しい肌も持ってる」
痩せぎすでガサガサの唇の君、似ても似つかない。
「女の子は爪だってきれいに切って磨いて色を塗るんだ」
見てごらん、君のこの伸び切って割れた鋭い爪ときたら。
私はぐるりと体ごと振り向いて、彼の目を覗き込む。
「じゃあ、そんな女の子になってほしいの?」
彼は夜空みたいな瞳を閉じた。私から逃げるみたいに。いいやと呟く。ライオンのままでいいと言って静かに立ち上がる。私は嬉しくなって、パズルのピースを放り出して、彼の首に抱きついた。ぶら下がる形になるけれど、彼は私を抱きとめてもくれない。棒立ちだ。その代わり、振り落とそうともしてこない。変なカッコウ。私は両足を絡ませて彼の体にしがみついた。見上げる。たてがみがバサリと落ちて首筋を刺した。彼の瞳は凪いでいる。
「…でも、君はいつかこの檻を出て行くんだろうね」
オリ? 私は反復する。彼は私を「飼っている」と表現し、実際そんなようなものだった。食事も睡眠も与えてくれたけど自由はなかったし、人間として奇妙だった。テーブルがないので床に置かれた食事をむさぼるように食べたし、ベッドもないので固い床で丸まって眠った。部屋の外に出てはいけないと言い渡されて鍵をかけられた。私は飼われていた。どうしてそうなったのか、ただ単に家具を買うお金や学校に行かせるお金がなかっただけなのか、全く事情は分からない。後に彼の言葉通りライオンは檻から出て行くことになったのだけれど、今でも私は遠い「不思議な記憶」としてあの部屋のことを覚えている。あの部屋の匂い、味、黄緑のパズル。それから、彼のことも。あの夜空みたいに煌めく瞳と、目元の優しい皺と、分厚く大きな掌。私の名を呼ぶ、掠れた声。
彼は一体誰だったんだろう。
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2013/04/13 (Sat)
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