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5.なんて素敵な人/8.きらきら

ぼくはポケットの中にきらきらを飼っている。 薄桃色や黄緑、橙色や水色、色んな色のきらきらだ。ぼくが何にもしないときらきらは上着のポケットの中でちゃあんと大人しくしてるし、手を差し入れれば喜んで零れ落ちてくる。 光って消えてしまっても、いつの間にかポケットの中にまた戻ってくるからいなくなるってことはない。ぼくはきらきらのことが好きだった。鳴くことはないし、餌を食べることだってない、柔らかい尻尾だってないけど、好きだった。きらきらもきっとぼくのことが好きだった。ポケットに手を突っ込んでそっと掻き回すと、嬉しそうにシャラシャラ掌に纏わりついてきた。
だけど人はきらきらのことを理解してくれない。「え? なに?」ってきょとんとして、きらきらのことが見えない人もいる。見えたって、「金平糖?」だとか、「手がべたべたしないの?」なんて、見当違いなことを聞いてくる。だからぼくは積極的にきらきらのことを人に見せるのをやめたんだ。その代わり、そっと零す。
例えば駅で。交差点で。雑踏の中、人知れずポケットに手を入れ、少しずつ、少しずつきらきらを落としていく。白ピンク水色黄緑オレンジ色、ぼくの歩いた後に光の線が出来て、少しすると消える。ぼくは試していた。きらきらの見える人を探していた。人混みの中で、はっとぼくのことを振り返る人を探していた。
都会の人々は忙しくって、誰もぼくを振り返らない。だけどそんなある日、とうとう、見つけたんだ。
彼女ははっと踵の高い靴で立ち尽くしていた。道行く人が邪魔そうに彼女の肩にぶつかっていく。それでも、目を逸らすことはない。ぼくのポケットをじっと見ている。彼女のハイヒールは赤く、スカートだって短くって、胸をさらけ出すような下品な服を身に纏っている。化粧だって濃いし、染髪を繰り返した茶色い髪はちぢれている。でもぼくには分かった。彼女はこう言ったんだ。
「なんて素敵な人…!」
彼女の瞳の中にきらきらが宿っている。ぼくには分かったんだ。どんな格好をしてたって、コンタクトをしてたってファンデーションを塗りたくってたって彼女の素顔はほんとうはとてもうつくしい人なんだってことが。ぼくは両手にポケットいっぱいのきらきらを差し出しながら言う。ぼくと一緒に、きらきらを飼いませんか。

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